END END SUMMER

Melt-Self様
夏休み。たった一人の肉親だった母の死。
信じられなくて信じたくなくて、
現実から逃避する少女の前に現われた見知らぬ男は、彼女の中に踏み込んで波風を立てる。
夏休みが終わるまでの10日間。
男との奇妙な共同生活の転がる先にあるものは…。

前半の淡々と消極的に死に向かう様子。男との交流で怒ったり戸惑ったり揺れ動く感情。
主人公の女の子の内面描写がとても丁寧で、丁寧だからこそ読んでいて胸がきりきりする。
青年が登場して話が一気に転がりだしてからの、少女の静かな嵐のような感情がすごい。
引きずられて一気に読んでしまいました。

青年と少女のやりとりがたくさん描かれているのも個人的にポイント高し。
「青年少女」というフレーズにピンとくる方でしたらかなり好みなお話だと思われます。

全体的に水を連想させるようなシステム周りのデザインも素敵。
イラスト(すごく綺麗)は幕間のみで、劇中に立ち絵はありませんが、
鮮やかな背景写真が夏という季節の持つ透明感を表しているようで、
世界観にどっぷりと浸りこむことができました。
文章やCG以外の雰囲気もだいじだな、と改めて思ったり。

*鬱耐性がない方、引きずられやすい方は注意かもしれません。

以下微ネタバレ感想

緩慢な死と緩やかな再生のお話だったなー、と。
前半の静かで荒々しい鬱展開をぬけた後の、穏やかでぎこちない交流が眩しかったです。

私の青年少女萌えのすべてが詰まっていました。
前半のぎりぎりと精神を削りあうような凌ぎ合いも、
後半の穏やかな交流も、やり取りのすべてがツボでツボでにやにやしっぱなしでした。
二人の交流はたっぷりエピソードを割いて描かれていたので、
心のそこからご馳走様でした、という心地です。
こんなに細やかに描かれてる青年少女はそうそうない……

ていうか後半はナチュラルにいちゃいちゃしていて悶えました。
二人ともラブラブすぎる。同じ目線にたったじゃれあいがすごく可愛かったー
後半のあの甘さは、中盤の鬱展開があったからこそですね。ほんとう絶妙な塩梅。

相手への好きだっていう思いが、恋愛や親愛などと明確に色付けされてなくて、
そのどこか未分化なところが成熟しきっていない二人の関係性にはまっていていいなあと思いました。

予告見て続編に期待がたかまりました。
あの題名ってことは、製作者の方は『回転銀河』がお好きなのでしょうか?
そうだとしたらますます私好みそうで楽しみです。