「フラグの折れたエンジェル」感想

このところプレイ中の村正に傾きつつあった心を一気に軌道修正されました。発売して一年、振り返れば毎日俺つばのことを考えていたような人間には破壊力強すぎた。
以下「俺たちに翼はない」とそのキャラクター人気投票記念SSのネタバレが含まれます。
前編中編で気になったのは明日香がシュウちゃんのところに話しかけにくるシーンでした。文字通りの漫才会話ですごい笑ったけれど、何回も積み上げることで明日香の諦めの悪さとその本気加減を表してるんだろうなあと思い、すごく切なくなりました。でもまだ俺つば本編の範疇だったと思います。コメディ面ばかり取り上げられがちですが、下地にある切なさも「俺たちに翼はない」という作品の魅力の一つだと思うので。
とはいえ俺つばはコメディ作品だし、切なさも笑いのスパイスであるとも思います。でも後編はスパイスの方がより強く感じられました。前編中編の笑いが吹き飛ぶくらいに後編のやりとりが強かった。これ、ライターの頭の中にはずっとあった展開なんだろうけど、こういう機会がなければ日の目を見ることはなかったんじゃないでしょうか。本編とその流れに織り込むにはスパイスが効きすぎている。
ほのかに憧憬を抱いていた人がいなくなって、でも帰ってくる可能性を捨て切れなくて、もう無理なんだ手遅れなんだと分かったときに彼の人への思いが恋だったと気づくのって、失恋の一語では言い表せない複雑さと重みがありますね。明日香の心情を邪推と言う名の解釈をしつつSSを読んでいたので、感情移入をしすぎてすごく苦しかったです。好きだった人がいなくなるのと、いなくなった人が好きだったのでは、どのように未練無念が違うのかしらなどと考えてしまいます。対明日香ではなく対亜衣の話も読んでみたいですねー。
明日香の激情もシュウちゃんの成長も印象深いですが、シュウちゃんのモノローグに一瞬浮かんだタカシくんがすごくタカシくんで、また彼の物語にならないかと明日香と同じようなどうしようもない思いが過ぎりました。
だらだらと要領を得ない感想を綴りましたが、こういうSSが違和感なく馴染む俺つばの作品世界が私は大好きです。