斎藤けん「亡鬼桜奇譚」

亡鬼桜奇譚 (花とゆめCOMICS)

亡鬼桜奇譚 (花とゆめCOMICS)

鬼の娘と旅人、社会からはみ出た二人の交流を描いた表題作
寿命を刻む左手の銀の時計と永遠と少女の話、「無限時計」
猟奇的なメイドと二人きり、閉ざされた館は過去を映し出していく「サンドグラスの檻」
花が巡り人も巡るショートショート、「花のカノン」

斎藤けんさんの短編集二冊目。相変わらずの凝った設定と、優しくてちょっと黒い世界観が素敵でした。恋愛色薄めで幻想的だったり思春期だったり人の温かさだったりで短編らしいバラエティに富んでて楽しかったです。時間を扱うお話が2つあったせいか、今回は全体的に切ない感じ。斎藤さんはファンタジーというよりも、読んでて童話っぽさ寓話っぽさを感じますねー。明確な答えやハッピーエンドがないのもそう思う理由かもしれない。さらっと毒を混ぜるあたりも。
無限時計の寿命の示す時計が、左手の薬指と結ばれているのが意味深で気になりました。あれは運命の暗喩なんだろうか。サンドグラスの檻は逆行的に進んでいく構成がお気に入り。サスペンスな雰囲気に猟奇的なメイドがいい味出してる。次の短編集も楽しみ。