読んでるものもの。

俺つば3章が好きすぎて、IWGPの原作に手を出しました。順々に読んでって今は「反自殺クラブ」。3章に似てるのはドラマの方らしいんですが、原作は原作で面白い。モチーフっぽいものを見つけてはにやにやしてます。こっちは群像劇というより社会派サスペンスな感じ?一人称なのでカメラが近くて生っぽい。ドキュメンタリーみたいな。
あとは「天山の巫女ソニン」を読み進め中。これぞ少女向け児童文学!で面白いです。あっさりめな文体が読みやすくて、もったいないのにさくさく読んでしまう。
荻原規子のRDGも近々借りる予定。ここ最近は割と読書づいてる感じ。

斎藤けん「亡鬼桜奇譚」

亡鬼桜奇譚 (花とゆめCOMICS)

亡鬼桜奇譚 (花とゆめCOMICS)

鬼の娘と旅人、社会からはみ出た二人の交流を描いた表題作
寿命を刻む左手の銀の時計と永遠と少女の話、「無限時計」
猟奇的なメイドと二人きり、閉ざされた館は過去を映し出していく「サンドグラスの檻」
花が巡り人も巡るショートショート、「花のカノン」

斎藤けんさんの短編集二冊目。相変わらずの凝った設定と、優しくてちょっと黒い世界観が素敵でした。恋愛色薄めで幻想的だったり思春期だったり人の温かさだったりで短編らしいバラエティに富んでて楽しかったです。時間を扱うお話が2つあったせいか、今回は全体的に切ない感じ。斎藤さんはファンタジーというよりも、読んでて童話っぽさ寓話っぽさを感じますねー。明確な答えやハッピーエンドがないのもそう思う理由かもしれない。さらっと毒を混ぜるあたりも。
無限時計の寿命の示す時計が、左手の薬指と結ばれているのが意味深で気になりました。あれは運命の暗喩なんだろうか。サンドグラスの檻は逆行的に進んでいく構成がお気に入り。サスペンスな雰囲気に猟奇的なメイドがいい味出してる。次の短編集も楽しみ。

天乃忍「片恋トライアングル」(1)

片恋トライアングル 第1巻 (花とゆめCOMICS)

片恋トライアングル 第1巻 (花とゆめCOMICS)

文科系少女関谷さんは結城君に片思い
校内一のモテ男葛西君はなんだか関谷さんが気になる
マイペースな読書少年結城君は葛西君の恋を応援
一方通行な思いは時に絡まり時にすれ違いながらも切れることなく続いていく…

関谷さん→結城君→葛西君、の順にバトンのように繋がる話とドミノのように連鎖していく感情の動きからなるオムニバス形式の一話がすごく秀逸だと思います。二話以降はオムニバス形式じゃなくなってしまうんですが、主人公の関谷さんだけでなく結城君と葛西君の心情もはっきり描写されているので、一種の群像劇としての面白さがあります。3人主人公のようなつもりで描いている、というあとがきを読んですごく納得。
自分の感情に素直に行動していく三人が素敵でした。三角関係の恋の行方も足踏みすることなく変化していくので続きが気になってしょうがなかったです。リリカルできゅんきゅんするモノローグはこれぞ少女漫画って感じでした。「頑張る女の子」「無自覚片思い」「黒髪眼鏡男子」あたりにピンときた方はぜひぜひ。

するする詐欺

更新すると宣言したまま放置してたものをようやく書き上げました。
リニュしてもなんにも変わっていません。
その間に俺つば関連は、四月馬鹿、コンプティークでのエンド後SS、人気投票といろいろありました。
どれもみんな楽しかったです。
やっとこさ一区切りついたのでまたのたのた更新してこうかと。
俺つばについてはまだ書きかけの記事があるんですが、とりあえずそれはおいておいて、
以前のように読んだものなんかの感想をあげてこうと思います。
ついったーでたまにエロゲ実況したログをここにまとめたりしてるので、興味があればどぞ。

俺たちに翼はない

*18禁に付き注意
この記事にネタバレはありません。たぶん。

俺たちに翼はない -Limited Edition-

俺たちに翼はない -Limited Edition-


―――大都市「柳木原」
おびただしい数のひとと建物がひしめく、巨大な繁華街。
―――季節は冬。
空を見上げれば、そこには無表情な白い空。
ありがちな悩みとありがちじゃない悩みを抱えた若者たち。
彼らが出会う、恋ともろもろ。
それはきっと何処にでもある、ありふれた物語。

架空の都市柳木原を舞台にした、
一癖も二癖もありすぎる登場人物が織り成す青春群像劇。

 笑ったりにやけたり爆笑したり、ジーンとしたりほろりとしたり、場面によってはドン引きしたり。でも終わった後には「あー楽しかったー!」と心から思える作品でした。

 ギャグが面白いとかキャラ同士の掛け合いが笑えたとか、メインヒロインはもちろん主人公達もサブキャラもみんな最高だとか、どのカップルのやりとりにも萌え悶えたとか、ぶちまけたいことは色々ありますが、個人的に一番魅力的だったのは、圧倒的なライブ感でした。リアルではなくリアリティ。こんな奴いねーよwではなく、こんな奴いるかも、と思わされてしまうというか。

 「あー」とか「その」なんかのつなぎ言葉がいっぱい入った、なかなか要領を得なかったり、時にだらだらと感じられるセリフは、声優さんたちの演技効果(本職のラッパーがいたりとか)もあってかどこか生っぽく、主人公たちの語りかけるような口調も相まって目の前で上演される演劇を見ているようでした。映像化されるんだとしたらアニメよりも実写に向いてるんじゃないかなーなんて思ったり。

 個性的すぎるキャラクターたちも、単に装飾的な口調だけで区別されるのではなく、プレイ後に性格やバックグラウンドがぱっと思い描けるくらい細かく描写されています。ライターさんはきっとそれぞれのキャラに履歴書を作成してあるんじゃないですかねー。そう思うくらいメインからサブまでキャラクターがしっかり立っています。
 例えば、千歳鷲介編のメインヒロイン日和子さんは舞台であるバイト先のアレキサンダーでは最年少(登場する人の中で)なので終始敬語です。しかし敬語キャラというわけではなく、クラスメイトと話す時は砕けた口調で話をしています。
 また、一人のキャラターに対する呼称も多種多様です。人物Aをさん付け君付けなどで呼ぶのはもちろん、A'やエーだったり、ほとんどかけ離れた呼び方をしたり。でも実際呼称ってそういうものだと思うんです。こういった設定の丁寧さがキャラクターに厚みを増し、リアリティを与えているんだなーと思いました。あと、あの数のキャラクターをしっかり裁いているのは本当にすごいです。

 この『俺たちに翼はない』という作品はオンリーワンがいっぱいです。一番楽しかったり一番萌えたり一番笑ったり一番泣いたり。一番がいっぱい。個性的なキャラクターに、カラーの異なるそれぞれの章。一周するだけでも色んな味が楽しめます。一つのことから一つの意味ではなくて、二つも三つも読み取れるので二周目も楽しい。むしろ二周目からが本番かもしれません。

 興味を持った方はぜひ体験版をプレイしてみてください。(公式のプレイ推奨順は2章→3章→1章)本当は買ってみてください、と言いたいところなんですが、テキストのクセが強い(読み難いわけではない)ので、まず体験版での様子見をおすすめします。いろんなレビューでは俺つばは人を選ぶ選ぶと言われていますが、「物語」が好きなら大抵の人は楽しめるんじゃないでしょうか。特に私と同じような雑食系漫画オタクにはぴったりかと。恋愛ADVという枠組みに囚われなければ、むしろ人を選ばない作風だと思います。
 絵が苦手なんだよなーと躊躇している人も大丈夫です。読んでるうちに慣れます。立ち絵は表情豊かでくるくる動くし、髪の色や服装(一部除く)も二次元的な奇抜さがなくリアルよりな世界観にあっています。むしろ毒気が中和されて丁度いいと思うようになるかもしれません。
 ネタバレ踏んじゃったんだよなーという人もいると思います。確かに面白さに影響することは否めませんが、それは俺つばの楽しさのすべてじゃないです。ハードの仕組みを知ってしまってもまだソフトがあります。体験版でテキストやシナリオに惚れこんだ人はぜひ本編もプレイしてみてください。

 一つの作品にこんなに熱中したのは久しぶりでした。面白かったもの泣いたものなど、琴線に触れた作品は何度も何度も読み返してしまうものですが、この作品も今後何度もプレイしてしまうと思います。というか既にしている。
 エロゲをプレイし始めたのはここ2年ほどで、テキストに定評があるライターさんらしいという情報、さらにテキストがいい、ということの意味すらよくわからないままになんとなく3章体験版をやってみたんですが、もうそれだけで十分わかりました。無意味な(に見える)やり取りさえも飽きさせないで惹き込む力がすごかった。