高尾滋「スロップマンションにお帰り」
- 作者: 高尾滋
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2000/05
- メディア: コミック
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この心
忘れ得ぬ恋しさを
人外の出てくる話は表題作の『スロップマンションにお帰り』と同時収録作『あじさいの庭』。
まずは表題作について。この短編集の中ではこの話が一番好きです。黒髪おかっぱで、日本人女性の凛としたようすをそのまま形にしたような鶴と、彼女が訪ねたイギリスの父親の家にいたにこやかな青年ツネとの不思議であたたかで、すこし切ない交流を描いた作品です。すべて分かってしまった鶴が、ツネと呼ぼうとして言葉に詰まってしまうところが一番印象的で、そのときのモノローグのどうしようもない切なさに胸が痛くなってしまいました。
「あじさいの庭」は事故で両親をなくした幼い少女が、書生姿の不思議な少年友とのふれ合いを通じて元気になるというお話です。これだけですとどこが人外?という感じですが、読めば分かります。表題作が切なかったのに対して、こちらは読後ふんわりと暖かな気分になりました。高尾さんが子供大好きとあってさすがに珠枝様は可愛いです。