小川洋子「博士の愛した数式」

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

「いいや、ここにあるよ」
彼は自分の胸を指差した。
透明で優しいお話に最初から最後まで泣き通しでした。自分でもびっくり。
↑の台詞を目にした時に、この物語の奥深くに流れている悲しみに同調してしまったようです。
些細な出来事にも切なくなってしまってどうしようもありませんでした。
おかげで目が腫れて腫れて。
私、√、博士は最後まで私、√、博士のままで、
この透明な物語は具体性がなくどこまでも抽象的で、
小川さんは数学そのものを書きたかったのかぁという気がしました。


数学の話。
私の父は数学者になりたかった人で、子供の頃よく数学の話をしてくれました。
難しくて内容は理解しきれなかったのですが、
父が何度も言っていた「数学は美しい」という言葉はすごく印象に残りました。
学問としての数学に魅了された人はみな数学を「美しい」と形容している気がします。
この本を読んだ方も皆、同じように美しさを感じたのではないでしょうか。
私も受験数学にとりつかれてすっかり忘れていたその美しさを思い出しました。
今度帰省したらフェルマーの最終定理の本読もう。